バラエティ番組で
戦時中に
軍隊の一員として参加していた
熊
の話があった
人と熊との友情
もちろん
その内容も心動かされるもの
であったが
それ以上に
虚無感を感じた
当時の様子が
複数枚のモノクロ写真で紹介された
その写真には
人よりも大きな熊が
まるで人間のように写されていた
周囲の人間たちも
そこに熊がいるのが当然のように
決まって笑顔であった
しかし
その写真に写っている熊は
その写真に写っている人々は
誰一人として
今この世界には存在しない
モノクロ写真で切り取った
その瞬間は
確かにそこに存在し
同じ時代を過ごしていたのに
もう誰もこの世には存在していない
その時のことを語ることができる者など
1人もいない
当たり前のことなのだろうが
虚しさも感じる
どんなに素晴らしいことがあっても
時が経てば
移ろってゆく
確かに
その時その場所で起こったことでも
過去のことになっていき
語り継がれることもあれば
置き去りにされていくこともある
だからこそ
今この瞬間を大切にしたい
大好きな人も
苦手な人も
交差点ですれ違った人も
テレビに映る有名人も
たまたま
同じ時代に生まれ
たまたま
同じ時を過ごすことができている
そう考えると
日常は非日常で
出会ったことに感謝したい
数十年後
モノクロ写真になってしまうからこそ
今この瞬間を
十分に味わい楽しみたい
QEENが好きだ
歌声を聞きながら
フレディのことを想う
でも
彼ももうこの世にはいない
同じ時を過ごすことも叶わない
しかし
歌声を聞くことで
いつでも彼を感じることはできる
永遠なんてない
今は永遠に続かない
必ず
誰にでも
モノクロ写真となるときが訪れるのだから
もっと早く出会っていればよかった
そんなことない
出会うべくして出会うのだろうし
もっと早く出会っていたら
ただすれ違うだけで
言葉を交わすこともないかもしれない
もっと早く気づいていればよかった
そんなことない
今が気づく準備ができたタイミング
だからこそ
すっと受け入れることができる
もっと早く気づいていれば
そこまで深く理解できないかもしれない
時間って不思議だ
時間だけは平等に与えられている
なんていうけれど
その使い方は
人各々で
同じ時間を費やしても
人の気持ち次第で
密度は異なる
タイタニックを観た時にも
同じようなことを感じた
優雅な船旅
確かにそこに人々は存在していた
生き生きと描かれたようにダンスを楽しみ
その時を生きていた
沈没後は
海の奥深くに沈み
時が止まってしまったよう
映像もモノクロに見える
色を失ってしまったように
移ろってゆく様を嘆くのも違うと思う
だからこそ
今を精一杯生きていきたい
一つ一つ丁寧にしていきたい
強くそう思った
いつか
モノクロ写真になる頃には
満足した自分でいたいから