劇場や映画館の上演前
ブザーとともに照明が落ち
非常灯が点灯する
高い天井に反響していた
人々のざわめきも鎮まり
どこからか
風が吹いてきて
空気が入れ替わる気がする
その瞬間が好きだ
それまでのザワザワして
もうすぐ始まるという期待感を持つ時間も
嫌いではない
初めて
ミュージカルを観に行った
100人の一般の方々が
100日かけて稽古したミュージカル
パンフレットには
10代から90代までの
出演者の顔写真とともに
手書きのメッセージカードが添えられていた
内容の予備知識もなく
なんとなく
あの雰囲気を味わいたい気持ちもあり
出かけることにした
照明が落ち
パッとスポットライトが光る
客席に下りた3名の演者が舞台に駆け上る
幕が開くと
100名の姿が現れた
圧巻される
歌とダンス
徐々にストーリーに引き込まれ
前列より順番に客席にもライトが向けられる
前列に照らされたライトは
キラキラとお客さんを照らし出し
幻想的だった
徐々にライトが近づいてくる
眩しいと感じたその時に
おそらく
私もキラキラと照らし出されていたのだろう
しかし
自分にライトが当てられても
自分では見れないし
キラキラしている実感もなかった
もしかすると
人生においても
スポットライトを浴びている最中や
自分が輝いているときには
気が付かないのかもしれない
一歩下がってみることで
はじめて実感できるのかもしれない
やがて
国と国との争いの場面になった
それは目の前にある舞台の上での出来事であり
役を演じているだけと
分かっているのに
涙で目がにじんだ
自分の思考とは無関係に
悲しくなった
理由の説明なんてできない
争うことが
悲しいと心が感じた
ラストは
終わりそうで終わらない
歌→ダンス→歌→ダンス・・・
そして
カーテンコール
終わりそうで終わらない
ケアマネさんの私
お客様からお電話をいただいて
終わりそうで終わらないことが多い
多すぎる
じゃぁまた明日
長くなってしまって申し訳ありません
そろそろ会議ですので
もうご飯の仕度ではないでしょうか
など
結びの言葉を繰り出すが
そこから
話し出す方が数名いらっしゃる
一頻りも二頻りもお話を伺うが
結局は
全部言いたいことを話されるまでは
終話に結びつかない
だから
ただただ話を伺う
なんか仕事の電話みたいだなぁ
と先ほどの涙はどこへやら
演者の方々が客席に流れ落ち
握手を求められる
若者もいれば
主婦と思われる女性や
90代の男性もおり
いくつになっても
熱中できるものがあることが
うらやましくもあり
また
一歩踏み出して
ミュージカルに挑戦しようと思われたことに
敬意を称したいと思った
そこには
体感したものにしか分からないものが
あるのだと思う
映画が始まる前の
空気が入れ替わるような
あの瞬間
またいつか
ゆっくりと味わいたい
できることなら
誰かの隣で・・