晴れた日の正午ごろだった。
母の所要に付き添い車で帰宅する際、自宅手前の畑の道端に軽トラックが停まっていた。その畑の持ち主の自宅は、この辺りではないらしく、軽トラックで畑仕事に来ていることはなんとなく知っていたが、どこのどなたかなのかは知らない。
自宅に車を停めた後、母が数十メートル先の通り過ぎた畑を気にしていた。
「あのおじさん、具合が悪いんじゃない?軽トラの横にしゃがんだままだもの。ちょっと見に行ったら?」
見ると、確かにしゃがみ込んだまま荷台に片手をかけて、うなだれておられる。ちょっと休憩しているだけではないか?逆にこちらが怪しまれるのでは?と少し躊躇もしたが、気温がぐんぐん上昇している中、熱中症かもしれない。
畑までの直線を小走りで向かい、声をかけた。
聞くと、男性は以前から腰が悪く、たまに動けなくなるらしい。こうしてしばらく休んでいると、また動けるようになるという。車の運転も大丈夫とのこと。思いのほか、こちらを不審がることもなく、色々と話をしてくださった。軽トラの荷台と男性の足元のバケツには小ぶりのスイカが数個収穫されていた。
「こうやって声をかけてくれて、とても嬉しかった。ありがとう。良かったら、このスイカを持っていって。割れているけど、とてもおいしいんだ。切ってから冷蔵庫に入れるとよいよ」
せっかく収穫されたものを申し訳ない、何もしていないのにと遠慮させていただいたが、「嬉しかったから、ほらどうぞ」と勧められ、では遠慮なくと荷台から割れたスイカを一ついただくことにした。
何かの昔話のような気分だった。
いただいたスイカは、言われた通りに切ってから冷蔵庫へ保管した。割れるほど熟れていてとても甘かった。様子を見に行くように仕向けた母は、「ああよかったね」と一言。スイカが相当美味しかったらしく、すぐに無くなってしまった。
ほっこりとした1日だった。