ケアマネの私とオフの私の日記

書くことで気持ちの整理をしていきたい。。

虐待ケース依頼から気づいた自分の過去

虐待ケースなのですが・・・と支援依頼があった。

 

脳梗塞や心疾患既往から要支援認定となった61歳傷病手当受給中の長男と、転倒後急激に身体能力が低下し要介護認定となった母親86歳の二人暮らし。

1日1食しか与えられていない、長男が母の年金を生活費にしてるようで虐待ケースとして自治体に報告しているという。

 

確かに、長男は鼓膜が破れるほど大きな声で、母親のできないことを荒々しい言葉で叱責する。理詰めで話す長男と、叱責に委縮して思考回路が停止してしまう母の会話は成立せず。互いが互いを思っているのに、言葉としてやり取りできず、そこに介入した他者からは結果、虐待とみなされる。

 

コトが起きてからでは遅いから。関わってしまったからには責任問題。なぜ未然に防げなかったのか?と追及されることを恐れ、たらい回しに責任転嫁されてゆく。

 

早急にサービス調整し、分離とまではいかないが、親子離れる時間を確保し、冷静に今後のことを検討するためショートステイを提案し、金銭面での不安も残るが、意外にも長男の了承も得られ、ショート担当者と自宅に伺った。

 

自宅訪問は3回目、本人の言動に長男が怒鳴る。怒鳴りながらも、しっかりと手続きは進み、家を後にした帰りの車内でのことだった。

 

ショート担当者の感想は、あの息子はどうにもならない。母親は施設に入った方が良い。怒鳴り散らすのを聞いていて腹が立っていた。治るわけがない。自分が一番だと思っており、もっと言えば社会不適合者だ。僕だったらもう、付き合っていられない。ケアマネで関わるなんて無理。人がいるのに部屋でずっとタバコ吸っているなんておかしでしょう。こちらから断っても良いくらいだ。と。

 

確かに。

 

ただ、もう一人の私は、少し違う見解だった。

 

長男が母を怒鳴り散らす場面を見て、生命にかかわる恐怖心は感じえなかった。元気な頃の母のように振舞えないことに苛立ち、もっとしっかりしてくれよと言っているように思えた。私が第三者だからなのだろうが、思春期の子供が自分本位な願いを母にぶつけているような、まるで幼い子供のように思えた。

やみくもに怒鳴るのではなく、

「(転ばないように)足を上げて歩けよ!」とか

「(ゴミ捨て場に行くのは転ぶのが怖いから)ゴミは玄関に置けと言っただろうが!」とか

「(認知症が進まないように身の回りのことは自分でした方が良いから)ちゃんとしまっとけよ!またなくしたのか!」とか。

変換して聞こえる。

 

( )の言葉を口にしないため、母親は訳が分からず、「あの子がああなったのは私が悪いんです」とすぐ長男に「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝る。

長男から、「何がごめんなさいなんだ!?」と質問返しされ、ただ怯えて思考回路がストップし答えられず、また長男に怒鳴られる。

 

「あなただけに言うけど、誰にも言わないでね。昨日は前髪を引っ張られ怖かった」と母親。それが事実なら虐待といえる。その前後に色んなやり取りがあったとしても。

 

この親子の今までの生活や他の家族との関係性、長男が幼少期に母からかけられた言葉、今の生活が複雑に絡み合っている。

 

他人が家庭に入り込み、事実に対して「それは虐待です」という。

当人同士の意思確認が最優先でもある。ただ、長男に怯える状況での母親の判断能力も問われる。長男も持病や精神疾患を抱えている状況での正常な判断能力を有すると言えるかどうか。

 

双方同意の上、母親が施設入所したとして、長男の今後の生活は誰が寄り添ってくれるのか?もちろん、他の家族なのだろうが、ハラスメントのように、どちらに立ってみるかで方向性は全く異なったものになるように思えてならない。

 

そして、ショート担当者の言葉を受け、この親子の姿を見て、異常さを感じない自分の方こそ、一般的という概念が欠如していることに気が付いた。付き合っていられないとは思えず、なぜ双方がそのような状況になっているのか紐ときたい、ボタンの掛け違いを治すことができればと考えていた。「こんなケース、深入りすると自分がつぶれるよ」と言われても、ピンとこなかった。同じように毎日を刻んでいる同じ時を生きている者同士で、何も好き好んで複雑に絡み合っているわけではないだろうし、何しろお互いを思う気持ちを感じるのだから。

 

一般的な概念が欠如している理由が、自分の過去に関係しているのではと、思い出したくもない、アルコール依存症の元夫との出来事が思い返された。この親子の比にならない異常な生活を送っていた過去を思うと、世間ずれしている自分にも納得でき、また諦めにも似た感情が沸いていた。

 

しかし、暴力は犯罪でもある。互いが不幸になる事態を未然に防げるよう、関係機関も巻き込みながら最善策を探っていきたい。