娘の歯科矯正を始めて5年は経つだろうか。
早く始めるほど抜歯は不要らしく、低所得者の1人親世帯ながらも資金を捻り出してのスタートだった。
私自身、歯並びが良いとは言えず、子供の頃に歯科矯正をしてほしかったが叶わなかった。
親の成し得なかったことを、子供に託すのは良くないと言われるが、歯科矯正は親としての義務だとの思いがある。放っておいては、頬から八重歯が突き出しかねない状況であったのも事実。
歯科矯正には1期と2期、固定期だったか段階がある。1期では、まだ幼い娘の口の中の金属の装置を決められた日程で、ネジで回して広げた。
2期は、今流行りのマウスピースのインビザラインか、お馴染み歯にボタンを付けるワイヤー矯正になる。
インビザラインは、食事以外は常時装置の必要があり、まだ中学生の彼女が自己管理できるのか不安が残った。
今なら、ワイヤー矯正と同額でできるという主治医の勧めもあり、インビザラインを選択。
やはり常時装置は困難であり、毎週交換するマウスピースが徐々に合わなくなる。一度は型を取り直し、新しいマウスピースを海外に発注された。
1年後、状況は変わらず、ワイヤー矯正への変更も提案される。
しかし、ワイヤー矯正は、歯茎にスクリューというネジを打ち込み固定するらしい。しかも、数カ所。
どう考えても痛い。
でも、このままだと矯正は永遠に終わらない。かと言って、常時マウスピースを装置するのはハードルが高すぎる。
彼女が出した答えは
「ネジを打つ」
だった。
彼女の決断にただただ感心し、尊敬すら覚えた。まだ中学生の彼女に、そんな決断を迫らねばならない自分を責めた。申し訳ない。
なら、やろう。
それから、歯の表面にボタンをつけて、口蓋に針金の装置が固定された。その後、もう3回ほど、通っているが、まだスクリュー(ネジ)は付けられていない。
いよいよかと、毎回覚悟して歯医者に行くが空振り状態。
あわよくば、スクリューなしで矯正完了して欲しい。
毎回定額で請求される医療費。自由診療であり、その処置内容や診療費の内訳は定かではないが、医療保険対象外であり、まして自力で矯正など出来るはずもなく、言い値に従うより他ない。
ここまで来たら後戻りはできないし、娘にしてあげられるのは、これくらいのことしかない。幸せな人生を歩んで欲しい。