satoimo's diary

人生も折り返し地点を過ぎた。自分を大切にするためには...

初めてのバイト

毎年12月になると

国道沿いの老舗のケーキ屋さんの軒先に

筆書きで

アルバイト募集中

とだけ書かれた板が吊り下げられた

 

時給も時間も募集対象者も

何の情報もない

木のまな板を縦半分にカットしたような板

 

人づてに

高校生でも雇ってもらえるらしいと

聞いていた

 

高校1年生の12月

勇気を振り絞って

ケーキ屋さんの門をたたいた

 

すると

優し気な初老のご夫婦で経営されているらしく

面接もなく履歴書すら求められず

 

冬休みになったら〇時に来てね

あと2人いるからね

 

と採用いただいた

 

それが私の人生初めてのアルバイトだ

 

クリスマスケーキのお手伝いだった

大きな電動ミキサーで卵を泡立て

業務用の薄力粉をふるって

さくっと混ぜ合わせる

丸いケーキ型に入れ

大きなオーブンへ

 

ここまでは

さすがに高校生には任せられず

おじさんが手際よく行う

 

焼きあがって冷ましたスポンジを半分にカットし

上のスポンジはひっくり返す

こうすることで

生クリームを塗った時の

角の仕上がりが美しくなる

 

中にクリームやフルーツを挟み

上のスポンジを乗せる

 

メインはケーキ全体を生クリームで包み込む作業

 

まずは

ヘラに生クリームを適量とり

スポンジケーキ上面にささっと塗っていく

ヘラの形が残らないように

力加減が難しい

 

次は側面

くるくる回る台をリズムよく回す

側面を塗って余ったクリームは上面に上がり

その角をヘラの腹を使って形よく上面に均していく

この工程が一番の難関であり

ここが決まればきれいに仕上がる

 

初めのうちは

おじさんも手直ししてくれたが

クリスマスが近づき

追いつかなくなる頃には

私も上達していった

 

今にして考えると

こんな重要な工程を

よく高校生のバイトに

任せられたなぁと思ってしまう

 

他の2人は男の子だったので

クリーム塗は難しく

フルーツを盛りつけていた

 

初めてのアルバイト

働いてお金をいただく

嬉しかった

 

クリスマスが終わると

次は正月のあんこもち作り

 

機械がおもちをカットしてくれるので

その中に手作業であんこを包み込む

 

よく高校生に任せてくれるなぁ

 

最終日には

封筒にバイト代を入れてくださった

 

おそらく

おじさんは勉強のためにと

あえて

高校生を雇ってくれていたのではと思う

 

大阪で修行して

地元に戻りケーキ屋を開業した

お菓子への熱い思いも語ってくれた

息子さんもお菓子の修行に行っている

と話されていた

 

数年後

区画整理でケーキ屋さんは向かい側に転居し

店舗は縮小された

 

さらに数年後

縮小された店舗の半分は

アップルパイ屋さんになっていた

息子さんがオープンされたのだとしたら

なんだか

とても嬉しい

 

ケーキ屋さんのバイトを皮切りに

私のバイト巡りが始まった

 

昨日は雨模様だったけれど

いちご狩に行き

なるべく小さないちごを収穫した

 

そして

あんこもちを包む要領で

大量のいちご大福を作った

 

どうしても

数を数えて業務的になってしまうが

バイトしていた頃を

懐かしみながら包んだ

一番に食べて欲しい人の顔を

思い浮かべて包んだ

 

何も心配なんていらない

大丈夫

大丈夫だよ