「勉強なんてしたくないわ」
と、資格の取れる私立高に進学したものの、結局は、40過ぎても勉強している。
そんな人生。
知らない世界、新しいものを学ぶ楽しさを、今頃知ることになる。
とある資格試験を受験した。
社会人になってからの方が、受験の機会も多く、受験会場の教室でも流石に緊張感はない。(長時間拘束されるので、トイレだけは気になる)
私のようなアラフォー世代もちらほら。中には、シルバーヘアを無造作にまとめた女性も見かけたが、大半は現役大学生のようだった。
ソーシャルディスタンスで、かなり余裕のある机の配置になっていた。普段は、専門学校であり、机は1人用で、椅子は、コロコロ付き、高さは、その都度部品を回して調整するタイプだった。
私の席も、椅子が低すぎて違和感はあったが、高さ調整してしまうのも忍びなく、人目を気にせず、椅子の上に正座したりしてやり過ごす。
年配の男性も同様、違和感を感じたようで、自分で高さ調整を始めると、試験官が駆け寄り、別の椅子を提案される。しかし、男性は、「自分でしますから(気にしないでください)」と返答。学生さんじゃ、こうは運ばないだろうなぁと、しっかり自己主張する男性に親近感を覚える。
休憩時には、換気のため、窓は全開。
学生と思しき綺麗なお姉さんは、膝掛け持参。さすが、慣れてらっしゃる。
試験の張り詰めた感じと、感染予防で、私語は皆無。そのかわり、あの椅子が軋む音、座り直すたびに擦れる金属音がやけに響いた。
年配の男性も、綺麗なお姉さんも、シルバーヘアの女性も、物音立てずに最後まで問題集に目を通しているようだった。その場の空気に溶け込んでいる。
が、ただ1人気になる人がいた。
私の斜め前に座り、やたらと荷物が多く通路にはみ出し、落ち着きがない。荷物を出したり入れたり、横を向いて座ってみたり、物を落としたり、明らかに浮いている感じ。隣の方も困惑されているのが分かる。
試験が始まっても、その人は人一倍椅子を軋ませていた。気になる。
昼食も各自席でとるようにとの指示。
昼食時も、カーテンを開けたり、閉めたり。席を立ったり、周りをキョロキョロ。その人のリュックにはコリアオリンピックのワッペンが縫い付けてあった。悪い人では無さそうだ。
その人の後ろの席の方は欠席で、とうとう自分の荷物を後ろの方の座席に置いた。悪い人では無さそうだが、何かちょっと。
ある程度の人間が集まると、不思議とそんなタイプの人が出現するのかもしれない。皆、同じ資格を目指して、同じ分野に興味を持っているだろうに、どうも違う感じのする人もおり不思議だ。
コロナ禍で外出自粛しており、久しぶりに大勢の人の中に紛れて、新鮮な感覚だった。
改めて思う。
色んな人がいる。
彼が言うように、皆、頑張って生きている。
だから、それで良いんだと。
私からすれば、少し変わった人に見受けられたが、良いも悪いもない。そういう人もいるんだ。
試験後は、走って帰った。
爽快感!を感じながら。
9キロだった。
ほら、私の方こそ、十分に変わった人だ。
だから、なんだって言うのだ?
それで良い。
それで良いんだ。