ケアマネの私とオフの私の日記

書くことで気持ちの整理をしていきたい。。

終の棲家

夢占いの女性と、彼女の終の棲家探しに出かけた。彼女は現在、市街地のアパートに一人暮らしである。2階の住人が電気を流してくからテレビも置けないと真剣に悩んでいた。事実は確認できていないが、彼女にとってはそれが事実なのだ。

 

「緑に囲まれて静かなところが良いわ。病院は難病もあるから今まで通り総合病院に行きたいの。」

 

保護を受けられているため、そう選択肢は多くない。1人で見学に行くことはできず

高齢者住宅専門の仲介業者へ依頼していた。

 

小雨の降る中、見学には民生委員さんも同行してくださることとなった。初回から対応してくださった仲介業者の女性は超ロングヘアで、どこか中島美嘉似であった。もう一方は新入社員というガタイの良い若い男性。彼女と民生員さん、中島美嘉とガタイの良い男性の乗った車の後を追って、市街地を離れ施設見学に向かった。

 

一件目は畑の中にある民家改修型の住宅型有料老人ホーム。猫が出迎えてくれ中に入ると、普通の民家のようだった。管理人さんが住み込みで隣は自宅になっている。買い物から洗濯、薬の管理まで生活に必要な部分は全て料金込み。入浴目的で外部のデイサービス利用となる。もしもの緊急事態に備えて、訪問診療は必須とのこと。

 

猫好きな彼女はすっかり気に入ったようで、「お部屋も見せてちょうだい」と部屋に案内されると、2人部屋という6畳一間は、就寝時にこそカーテンを閉めるが、ベッドを置くと足の踏み場もない広さであった。相部屋となる方もまだ未定である。トイレは共用でひとつ。台所もひとつで管理人さんが料理の支度を行う。自室での飲食は禁止され先ほど面談した食堂で食事をとる。民家改修型で以前の基準の為、部屋も廊下も狭く天井まで仕切られていない壁を後付けされたようだった。

彼女にとっては、「24時間誰かそばにいる」という安心感の方が大きいのかもしれない。しかし、今まで一人暮らしをしてきて料理や洗濯は自立し家財道具一式もある。それらを他人任せにすることに多少抵抗があるようだった。

 

二件目

 

さらに山奥に車を走らせ、もうどこを走っているのか分からない。到着したのは、まだ新しい建物の同じく住宅型有料老人ホームであった。部屋数も多く入所者も数十人規模のようだ。

入所者の利用必須となるデイサービス横の事務室に通される。サンドイッチマンの富澤似の副施設長が対応してくださった。事前にトリアージ用紙を送付しており、彼女の情報は提供済みだ。その用紙を見ながら富澤氏は

「じゃぁ、状況を聞かせてもらってよいですか?」

「?」

(お手元に情報はありますよね)と言いたい気持ちを抑えて、再度、入所希望の経緯や身体・生活状況をご説明する。

「そうですか・・ちょっと待ってくださいね」

そう言って富澤氏はまた最初から用紙を読み始めた。その間、手持無沙汰に待たされる。テーブルの上には施設のパンフレットが置かれているが、富澤氏の範疇にある。

(見学に来ると分かっていたのに、なぜ今情報を読まれるのか?施設の説明よりも先に、入所希望している彼女の情報を聞かれる。もしこれで受け入れできないとなるのであれば、事前の情報提供時に書類選考でもしてもらえれば、入所の可能性のない施設の見学に行く必要はないし、富澤氏も手間が省けたのではないか?)そのようなことを十分に考える時間を与えられた。

 

それから富澤氏は、病気のことが気になったようで、看護師を呼びその看護師に病名を伝えて説明を受ける。その間、彼女は「もう、ここは遠いですし、入る気はありません」と言い出し中島美嘉氏も「見学の時間をとってもらっていますから、とりあえずお話を聞きましょう」と富澤氏に聞こえたのではないかと焦る。「こんなにプライベートなことを何度も聞かれて嫌な気持ちです」と彼女。

「確かにそうですね、でも施設側も責任がありますし、理解してもらうために施設に入るには、最初にこちらの情報をお伝えするのは仕方のないことだと思います」と私。

 

病気の確認にあまりに時間を要したため、中島美嘉氏から先にお部屋を見せて下さるようお願いし奥の居室部分の見学となった。

 

施設は新しく廊下も広く清潔感がある。居室はベッドとクローセットが備え付けてあり

フローリングで6畳以上はある。先ほどの施設同様、食事は食堂でトイレは共用だが

トイレも広く手すりの設置もあり数か所設けられていた。ハード面では申し分ない。

室内の壁も一面だけ淡い緑色になっており今風だ。「この壁紙の色はなんていうのですか?私、この色好きです。荷物もいっぱい入るし、ここにいる方は皆さん、幸せそう」

と彼女。

富澤氏の対応はいまいちであったが、部屋そのものはお気に召されたようだった。

 

次の予定があったため、先に失礼する。市街地までの道順が分からずナビで帰った。確かに緑豊かで静かな場所。彼女のオーダー通りの2施設であった。さすが中島美嘉氏である。

 

その後、彼女から電話があり「もう少し、考えてみようかと思います。薬局の方もお客さんで施設に入っている人もいるみたいで、良いところを知っているかもしれないから聞いてみます。今日の仲介業者の2人、付き合っているのかと思って聞いてみたら、女性は良い人がいるみたいだけど、あの男性ではないんですって。ふふふ、てっきり夫婦かと思っていました」と彼女。

 

中島美嘉氏からも電話があり「富澤氏の方は、病気の関係で入所お断りの連絡がありました」とのことだった。

 

終の棲家探しは、彼女の納得いくまでお付き合いさせていただくことになりそうだ。