ケアマネの私とオフの私の日記

書くことで気持ちの整理をしていきたい。。

展覧会

高次脳機能障害の夫と二人暮らしの80代も間近となった女性。夫の女性関係や実家問題に悩まされながら、ほぼ一人で3人の男の子を育て上げた。担当している夫のモニタリング訪問の度、言い尽くせないほどのバックグラウンドを語ってくださり、その話のどこまでが本当なのか、言葉半分に聴いている節もあった。

 

その女性が所属する団体を通して美術館で絵画の展覧会をされるという。

 

いただいた案内はがきには、女性の作品がレイアウトされており、赤色をベースにした抽象画というものだろうか?文字のフォントもしっくり馴染んでおり、そのはがきは確かに女性のものだと感じた。普段はガレージに作品を入れているとは伺っていたが、やはりそれは真実だったと確信し、素敵なデザインの案内はがきを職場のデスクの前に貼った。

 

息子の卒業式の帰りに、一人で美術館へ向かう。

 

平日の昼間、人はまばらだった。案内所付近でうろうろされている女性が目に入る。幸い、ほかに来客はなく、女性と一緒に一点一点解説をいただきながら鑑賞させていただく。正直、抽象画の意味は分からない。何を表現しているのか?何を感じればよいのかすら分からない。

 

ただ、女性の作品が展示された一角だけは、何かを感じた。何を描いておられるのかは分からないが、その時の女性の感情が表現されており、作品を追うごとに少しずつ変化しているのは分かる。

 

彼女の家で展覧会の話を伺ったときに、きっと、夫との生活で大変な思いをされてきたが、その負のエネルギーがあったからこそ、これらの作品につながったのではないか。平凡といわれる暮らしの中では、このような絵は描けなかったのではないか。ある意味、夫のおかげともいえる。もちろん、もともとの彼女の才能も根っこにはあるだろう。夫婦の共鳴反応から、この芸術がうまれたのではないか。そう思った。

 

「今まで言いたくはなかったんですけど、実は私もそう思っていたんです。夫のせいで大変な思いもしましたが、その思いを絵にぶつけることができたのかもしれません」

 

病気の影響もあり、普段は粗暴な夫だが、妻の展覧会開催はとても喜ばれ、今までかたくなに拒否されていたショートステイも妻の展覧会準備のためならと受け入れてくださった。

 

すべての作品を鑑賞後、妻から賞をもらった作品があること、妻の絵が出展されることを快く思わない方もいることを伺う。

 

絵を評価するとは、どういうことなのだろうか?皆各々感じ方は違うわけで、優秀とか才能がないとか、他者が判断することに違和感を覚えた。しかし、受賞を目指して練習するのならば、やはり評価は必要なのだろうか。色んな世界がある。私にはまだ分からないことばかりだ。

 

そして、46歳から絵を描き始めた彼女の第二幕が始まろうとしている。今年46歳となる自分を重ねずにはいられなかった。