月に数回
市役所の窓口へ代行申請に行く
その市役所はかなり古い建物で
床は石?造りで
天井は高く
夏場でも冷んやりする程で
窓口にはパイプ椅子が並んでいる
受付簿に名前を記入し
廊下の長椅子に腰かけ
周りを眺める
受付カウンターに直角に置かれた
デスクに向かいパソコンを打ち
お客さんが来たら
90度椅子を回転させて
カウンター越しに対応される
なんだか
システマティックな光景だ
6つある受付の1席に
その気になる女性は座っている
毎回席は違うようだ
数か月前のことだった
私の記入ミスで事業所へ連絡が必要となった際
とても丁寧に対応してくださった彼女
見た目は
ごく普通の清潔感のある雰囲気
その風貌や立ち居振る舞いは
誠実の二文字がよく似合っていて
どこか懐かしさを感じる
おそらく
市役所の制服なのだろう
紺色のベストに
同色の真ん中に1本プリーツの入った
ひざ丈のスカート
ベストのインナーは制服はないのか
白いブラウスかTシャツを着ておられる
しっかりと確認はしていないが
おそらく
くるぶし丈の靴下に
黒のナースサンダル履きだろう
ボブというよりおかっぱと言った方が
彼女にはしっくりくるかもしれない
眼鏡をかけて中肉中背
ごくごく一般的な日本人女性という感じ
その市役所には
彼女のように制服を着ている方はほぼゼロ
皆ひらひらしたスカートや
太めのパンツなど
今流行りの服装ばかり
私にとって
ひときわ彼女は気になる存在になっていった
言葉尻は丁寧だが
いつもそこに感情はない
あくまで事務的に
用件が済むと
深々とお辞儀をされる
でも
そこにも感情は感じられない
あくまで制服で通すところ
確実で迅速な対応
無駄話をしているところも
見たこともない
ただその時の仕事を
仕事としてこなしてゆく
あの時までは
ただの市役所の女性だった
あの日
私もミスから気が動転して
感情が表出してしまい
彼女の琴線に触れるところまで
距離を詰めてしまった感覚がある
その時
初めて彼女が笑顔を見せてくれて
何か通じたような気がした
おそらく
彼女もあの日から
私に接するときには
少し感情を込めたお辞儀をしてくれる
気のせいかもしれないが・・
ラジオのチューニングがあった時みたいに
彼女と私の意識がつながったような
WI-FIを見つけてあのマークが出た時みたいに
彼女の周波数と私の周波数がハウリングしたような
特別に言葉を交わしたわけではないが
彼女に愛着が湧いてしまった
一方通行かもしれないが・・
もしかすると
私が何気に彼女に好意を抱いていると
それが彼女にも伝わっているのかもしれない
男女の恋愛関係とはまた違った
言葉など必要ない
魂レベルでの心地よさを感じたのであった
今日はどの受付に呼ばれるだろうか?
彼女のカウンターが良いなぁ
僅差でその隣の受付に呼ばれた
次の方の名前を呼ぶ彼女と
すれ違ったとき
お疲れ様でございます
彼女の立ち居振る舞いから
こちらにそう聞こえてきたようだった
これから先も
ゆっくり話をする機会もないだろうが
何か通じ合っているようで
気になる女性である
市役所に行くのも楽しみにしている