職場の歓送迎会について
「今回は見送った方が良いのではないでしょうか？」
場所も日程も決まっていたが
休校措置がとられる前に
互助会長に訊ねた
「4月には良くなっているかもしれないから
今のところは予定通りにします」
との返答
その数日後に首相が会見を開いた
マスクがない
トイレットペーパーがない
じわじわと世間が不安に襲われる
いよいよ
職場のマスクも2週間に3枚の配給制になった頃
同じ部署の60代の男性と
50代の女性2人が騒ぎ出した
「こんな時期に歓送迎会をするの？
おかしいんじゃない？
僕なんて参加したら2週間隔離するって家族に言われたし
何を考えているのか？」
「良く考えたら
会場に行くのに公共交通機関を使うし
あまり行きたくないよね」
「返金はなくても良いから行きたくない
強制って言われたらおかしいよね
なぜこの時期にこだわるのかな？」
などなど
確かに日程と会場は決まっているが
開催是非を確認したのは
まだ早期の段階であり
今この時点で
会長も「絶対に開催します」などとは
一言も言っていない
彼らの妄想はまずます膨らんでいく
「何を考えているんだろうか？
僕は絶対行かないよ
開催するのかどうか互助会役員会を開いて決を採るべきだ
会長が一人で決めるのはおかしい
どうなっているんだ？」
「そうよね
おかしいよね
何を考えているのか・・」
「会長も今はまた考えも変わっているかもしれませんよ
絶対するなんて私も聞いていませんし
本人に聞かないと分からないじゃないですか」
そう言ったとたん
「いやおかしいよ
皆で決めるべきだ
強制するのはおかしい」
という流れになってしまい
火に油を注いでしまったようだった
とうの会長はこの場にはおらず
噂話の領域である
聞いているのも気分が悪くなり
「なら今連絡してみます
歓送迎会の開催について
こんな意見も出ていると話してみましょう」
会長はお休みのためＬＩＮＥで連絡すると
「今のところ予定通りです」
との返答だった
てっきり
保留または時期をずらして開催かと思っており
少し驚きもしたが
そんなことよりも
その場にいない者を悪者にして
言葉にしてもいないことを
さも言ったように妄想していく彼らを
非常に残念に思った
今ここで
何を言っても進展はないし
ただ不満を膨らませ事態を悪化させているだけ
もしかすると
そのように誰かを悪者に仕立て上げて盛り上がることが
彼らの目的かとさえ思ってしまう
おかしい
行きたくない
なら
行かないことを選択すればよい
彼らからはおかしいことなのかもしれないが
会長としてはおかしいという認識はないために
このような事態になっている
意見を述べるのは重要なことだとも思う
しかし
時には黙って自分の判断で動いても良いのではないか
おかしいのはおかしい
しかし
世の中なんておかしなことばかりで
一つずつ正していけたとしても微々たるものであり
大して変わりはしない
自分がおかしいことを選択しなければ良い
会長の返答に
彼らは更にヒートアップしていき
妄想はますます膨らみ
その姿は滑稽でもあった
