2歳くらいの女の子と母親
梅雨明け直後の日照りの中
手を繋いで
坂道をゆっくりと
登っていた
外はとても暑い
そんなことはお構いなしに
2人は
道端の花に立ち止まる
その横を足早に通り抜け
訪問先に向かった
そんな時期もあったっけ
昼間にお散歩しなければ
夜はぐっすり眠れないから
夜ご飯まで急ぐ理由もなく
ゆっくりと君と散歩をした
三度のご飯だけ気にして
ゆっくりと時間が流れる
ゆっくりと歩くから
初夏の匂いや風の感触までも感じて
ゆっくりとゆっくりと
歩んでいた
やがて
仕事を再開し
君たちを保育園に通わせる頃から
私には24時間では足りなくなった
はよぉはよぉ(早く早く)
早くなんて動けないのは
分かっていても
無意識に口から溢れる
はよぉはよぉ(早く早く)
私ペースの時間に
無理矢理引きずり込もうと
まだまだ小さい君たちに要求する
はよぉはよぉ(早く早く)
その頃から
私は時間に追われるようになり
少しでも効率よくスケジュールを組んで
遅刻しないように出勤し
まっすぐ前だけ向いて
寄り道などせずに
誰よりも早く帰るのに必死になっていた
1人で子育てしながら
仕事をしている負い目を感じないように
定時に帰宅できるように
無駄を省き
分単位で動き
1日に1日分のことをこなすのに
精一杯だった
今
思春期を迎えて
別々の時間を過ごしている
相変わらず君たちはマイペース
出来るだけ干渉しないようにしているが
つい目につくと言いたくなる
はよぉはよぉ(早く早く)
走り出したら止まらないランナーのように
もう少しゆっくりでも良いのに
私は止まることができないようだ
何を焦っているのか
はよぉはよぉ(早く早く)
が身に付いてしまい
君たちから見たら私はきっと
妖怪
はよぉはよぉばばぁ
といったところだろう
自覚はある
意識して抜け出す必要がありそうだ
そうしないと
人生の楽しみを失ってしまうような
気もする
もっと気楽で良いのに
もっと素直に
もっと肩の力を抜いて
出来ることしか出来ないのだから
それに
まだばばぁなんて言わせないぞ!