ケアマネの私とオフの私の日記

書くことで気持ちの整理をしていきたい。。

オシャンティー

「2階の男が、電気を流してくるの。ほら、聞こえるでしょ?シャーシャーって。テレビも使えなくなったから、ラジオを聴いてるのよ。この間から、早朝に、台所の電気を付けたり消したりされて、冷蔵庫も止まって。シッ!上に聞こえるから」

 

「民生委員に言ってもダメで、福祉事務所にも言ったし、警察に言えとか、法務局に言えと言われたけど、大ごとにしたくなくてまだ黙っているの。耳がキーンとするくらい電気を流すから、たまには上に向かって怒鳴るのよ」

 

一人暮らしの高齢女性

複雑な過去があり実質的な支援者は不在。毎月の訪問滞在時間は1時間強、この電気の話のループ。話し足りない際には、事務所に電話がくる。

 

「話し相手がいないから、いつも、たくさん話してごめんね。ありがとう」

 

電気の件が事実なのか確かめる術はない。おそらく妄想症状だろう。もはや、事実か作話か、そんなことはどうでも良いと私は思っている。

事実を告げたところで、何の解決になるだろう?彼女にとっては、電気を流されることは事実であり、それ故に困っているのだから、どうすれば、電気を流される(と思い込んでいる)ことを解決できるだろうか?

 

他のケースで

遅発性パラフレニーという症状を知った。

 

彼女の訴えはその症状に100%合致した。

服薬治療と環境調整

独り身の彼女に病識はなく受診は難しいため、服薬は困難。ならば、環境調整か。

 

聴き慣れてしまった電気の話に相槌を打っていると、彼女が若い頃病院勤めをしていたという話になった。

 

「病院で住み込みしていた頃、よくお友達と屋上で歌を歌っていたのよ。今、デイサービスでカラオケがあるでしょう、その歌を歌いたいと思うんだけど思い出せなくてね。街のCDショップに尋ねに行ったの。歌って見せたら、曲が分かったわ。◯◯の曲よ!嬉しくて、CDを買ってきて家でも何回も聞いて練習してるのよ。ふふふ」

 

妄想症状に苦しみながら、そんなお茶目なことをされていた事に驚き、私も嬉しくなった。

 

なんて、オシャンティーなのかしら!!

 

歳を重ねても、疾病を抱えても、彼女は彼女であり、病院の屋上で歌を歌っていた彼女であり続ける。自分で曲を、調べて練習して、カラオケで歌うということ。すごく素敵なことだと思う。

 

以前、杖に名前を貼りたいと頼まれ、ローマ字でテプラを作ったことがある。彼女は、大層喜んで下さり、花柄の新しい杖を買われた際にもリクエストされた。

 

さて、そんなオシャンティー彼女の望む生活を支援するには、何から取り掛かろうか。