私の生活圏域にやっと進出してくれた「タピオカドリンク専門店」
第一次タピオカブームの際は、乾燥タピオカを購入しココナッツミルクと混ぜて自宅で楽しんだこともあった。当時のものは、無色透明でとても小粒だったと記憶している。
最近は、コンビニなどでも普通に見かけるが、やはり想像していたものより、かなり小粒なものが多い。どこか、水っぽい感じも残る。
久しぶりに訪れたSCのフードコート内の一店舗に、長蛇の列ができていた。ソーシャルディスタンスを守るため、余計に列は長くなる。皆一様にあの太いストローをさしたタピオカドリンクを手にしていた。
中一の彼女は、久しぶりの外出でもあり、初めて見る「タピオカドリンク専門店」の小洒落た雰囲気にも圧倒され、常々「飲んでみたい」と言ってはいたが、その長蛇の列の最後尾に並ぶことに躊躇し、「クレープ屋さんのタピオカでいい」と言い出した。
「ん?本物の(コンビニのものが偽物ではないだろうが)タピオカ飲んでみたいんでしょう?ディズニーランドのアトラクションに並ぶよりは、すぐじゃない。せっかくだからこっちにしようよ」
地方都市に暮らす私たちには、列に並んで待つという習慣があまりない。できれば、並ばずにやり過ごしたいし、現に日常生活で長蛇の列に遭遇する場面も少ないのだ。夢の国ディズニーランドではそれが普通であるし、都会でも同様、郷に入っては郷に従えで並ぶことも厭わない。しかし、ここはいつものSC。
この日は幸い、時間はたっぷりあった。急いで他店のタピオカドリンクを買う必要はなく、並んででも本物のタピオカドリンクを彼女に飲んでほしかった。
「じゃ、一緒に並んでよね」
久しぶりの人込みに辟易し、一刻も早く椅子に腰かけたい気持ちをこらえて床に貼られた、立ち位置の靴マークの上に並ぶ。そうだ、もうここはきっとディズニーランドに違いないと言い聞かせて。
カウンターに近づくと、店員さんが容器に黒糖を塗っている姿や、ドリンクを作る姿が目に入る。
「見て、ああやって1杯ずつ作るから時間がかかるんだね」
「そうだね。容器に蓋するんだったら、作っておけば良いのにね」
「え~。そしたらタピオカが美味しくないじゃん。氷も解けるし」
「・・・確かに」
やっと手に入れた一番人気の黒糖ミルクティー。隣のカレー屋さんのカレーと同じ値段で、何だか手が出ずに、彼女の分のみ注文した。悲しい性である。
「わぁ、美味しい。本物だ。皆が並んででも買うのが分かったよ」
彼女に数口飲ませてもらう。そのタピオカは想像以上に粒が大きく、もちもちしていて文句なく美味しいものだった。スプーンで山盛り一杯口に頬張りたいほどだ。氷はいらない。タピオカ増し増しでお願いしたい・・・。
「定額給付金がもらえたら、何杯買えるかな?
(スマホの電卓で計算する)
わぁ、178杯だ!半年間毎日飲めるよ!」
「すごい!家の近くにあったら毎日買いに行きたいね」
「やっぱ、並んで良かったでしょう?妥協して、本当は飲みたいと思っていないものを買わずに、並んででもちゃんと飲みたいものを買えて良かったね」
「うん」
一足遅れて味わったタピオカドリンクは、心もハッピーにしてくれた。