「いいです、俺やりますから」
またしくじってしまった。
職場の管理者は、そういうタイプの人間であったことをつい忘れてしまい、手伝おうとすると、嫌な思いをするのはいつも自分。彼が悪いわけではない。
良かれと思って声をかけたり、手を出すと、ぴしゃっと否定される。おそらく、彼は否定しているつもりはなく、もしかするとこちらに負担をかけないように、すべて自分で引き受けているつもりなのかもしれないが、こちらからすれば、こちらの思いを受け取ってもらえずシャットアウトされ、不完全燃焼に陥る。悪いことをした気持ちにもなる。
自分が嫌な思いをしないためにはどうしたものか?
相手を変えることなどできないとよく言われる通り、こちらが変わるしかない。
考え抜いた結果、できるだけ彼に近寄らず、声をかけず、手伝おうなんてもってのほか、余計な口出しはせず、必要最小限の事務的なやり取りだけすることにしていた。
そうするうちに、なんだか自分がとても気の利かない人間になってきたようで、自ずとコミュニケーション能力も落ちていったように感じる日々。余計なことを言ってしまっては、また自分が嫌な思いをする、その事態を避けるために次第に笑顔は消えていったように思う。
もし、私なら・・・
好意はいったん受け止めて、お礼を言った後で、手伝いは不要なことを伝えたい。そうでなければ、一方通行になってしまうから。
良いことも、そうでないことも、投げかけられた気持ちや言葉は受け入れなくても良いが、受け止めてほしい。そうでなければ、全否定されているような気持になってしまうから。
彼と同じ職場で働くのは、なかなかの心構えが必要になる。いかにして、自分の平常心を保ち、そういうタイプの彼と上手くやっていくのか。
以前は世間話もしていたが、彼は自分の言いたいことを一方的に話し、相槌さえ必要としないようだった。もちろん、こちらの話に興味もないようで、何か聞かれることもない。話し手は常に彼であり、ただ聞き手に徹するのは、何の面白みもなかった。そんなんなら、壁に話しかければ?私はあなたのはけ口ではないとさえ感じたこともあった。
人の話を聞かない、意見を受け止めないことは、相手の存在を否定し、役割喪失にまでつながりかねないことがよく分かった。
もう少し、こちらがいやな思いをしないように対策を練ってみようと思う。