satoimo's diary

人生も折り返し地点を過ぎた。自分を大切にするためには...

スコーンの真実

「お母さん、これ食べていいよ」

 

息子から白いレジ袋を手渡された。中を見ると、透明なポリ袋に直径8センチほどのまあまあな大きさなスコーンが6個入っていた。

 

「わ!どうしたの?嬉しい。スコーン食べたかったんだよね」

 

まず、私にプレゼント?したいと思ってくれたことが嬉しかった。普段、彼からもらうものといえば、食べかけのお菓子や使用済の化粧品などであり、過去一度だけポイント付与にてコンビニでチョコレートを買ってくれた時には、それはそれは嬉しかった。

 

「あぁ、友達が日雇いのバイトで昨日一日だけスコーンを売ったらしい。それをもらったんだよ」

 

プレーン生地と思われる武骨なスコーン。個包装しているわけでもなく6個無造作にポリ袋に入れられて封もしていない。レジ袋にも店名の印字はない。いつどこで製造されたのか?商品名も原材料も内容量も賞味期限も不明。どのようにしてポリ袋に入れられたのか?素手で触った?誰が入れた?ただ現時点で明らかなのは、これはスコーンであるということのみ。その友達の名前を聞いてもはぐらかされる。こんな怪しいものを口にしても良いものだろうか?日雇いのバイトに売れ残りとはいえスコーンをくれるものなのだろうか?個包装していないスコーンはどのような販売形式だったのか?

 

見た目や包装など総合的に考えて、商品とは考えにくい。

 

かつて、彼のカバンの底からビニール袋の中で跡形もなく粉々になったものを発見したことがある。おそらくその原型は手作りクッキー。クッキーをくれる相手がいることを嬉しく思うとともに、原型があるうちに食べてほしいとも思った。気持ちは受け取ったのかもしれないが、作り手としては粉々になったクッキーを思うと胸が痛む。

 

そう、今回のスコーンも彼のために作ってくれた大切なお相手がいるのではないか?数秒間でここまで妄想が膨らみ、気づいた時には口から言葉が出ていた。

 

「もしかして、彼女からもらったの?」

 

しばし沈黙の後、「友達だって」と言い残し彼はその場を後にした。

 

もし彼女にもらったのならば、私が食べるのは忍びない。そういえば、数日前、チーズケーキを作った際、「僕、人が作った手作りのものお菓子って食べるのに抵抗があるんだよね」と言い放ち、(いつもご飯作ってますけど、人って目の前にいる母が作ったんですけど、素手で握ったおにぎりではなくオーブンで焼いて火も通していますけど、君が小さいころにはよく一緒にクッキー焼いてましたけど)と言いたい気持ちを堪えて、「まぁおいしいから」と勧め、一口食べると「わ、普通に美味しいじゃん。お店で売ってるやつみたい。食べるまでハードル高いけど美味しいわ」という場面があった。

 

総合して私の妄想結果としては、彼女から手作りスコーンをもらった。(ラッピングされていないのは疑問も残る)手作りお菓子に多少抵抗感じあり、スコーンなどというおしゃれなものを食べつけない彼は、母にそれを食べてほしいと手渡し、彼は彼女の気持ちだけ受け取った。母は出所の知れないスコーンではあったが、トースターでチンして色んな感情を味わいながら、美味しくいただいた。

 

真実はいかに。