ケアマネの私とオフの私の日記

書くことで気持ちの整理をしていきたい。。

科学的介護

上司に命じられ、新しくオープンする特別養護老人ホームへ見学に行った。同じく同法人の生活相談員の女性と二人で、パチンコ店の頭とりにでも行く気分だった。

 

国道沿いにある4階建ての建物。1階は駐車場で、道路揃いには砂利敷の合間に樹木が植えてある。落ち着いたダークブラウンの外壁に、全面ガラス張りのロビーが今っぽく、清潔感もあり、カタカナで表現するならスタイリッシュ。外観は住宅展示場のショールームのようだった。内覧会のため時間指定で、職員さんが付き丁寧に案内くださった。

 

特別養護老人ホームといえど、室内はホテルさながら。間接照明で落ち着いた雰囲気。フローリングは転倒時の衝撃吸収できるよう柔らかな素材を使用するが、施設です!という感じは全くない。もちろんバリアフリーで全室個室のユニットケア。消火器も壁に収納され施設全体の雰囲気は計算されているのだろう。各居室の洗面台は車いすでも利用しやすいよう昇降式。ベッドやチェストは標準装備でまるでビジネスホテルのよう。トイレは共用だが、室内へのポータブルトイレの設置も可能。そのポータブルトイレは今までのそれとは見た目も造りも違い、各居室の壁に排水が設置されており、ウォシュレットつきの水洗トイレを丸ごと移動して居室に設置するみたいな。いちいちバケツの汚物を処理する必要はなく、水洗できるなんて画期的。

 

日光に近い光を浴びる療法や、平たく言えば間違い探しの紙や画面を使った脳トレを入所者全員に時間を割り振って週2日実施なんてすばらしい。

 

どこか外国の国と共同開発したアプリ利用しタブレットで顔を分析すると、表情筋を測定し、その時の感情を数値化する。その数値に合わせて20分ほどの動画を視聴。その間に動画を話題にしたスタッフとの会話もでき、その後また測定する。もちろんその結果は、家族やケアマネにも提供でき、スタッフ間でも共有できる。

 

ベッドに標準装備されたマットでは、眠りの深さや時間、心拍数なども数値化される。同意を得られた方のみ居室にカメラを設置し、夜間など離床を確認するとモニターに表示され訪室前に状況確認できる。もちろん、それらのデータは家族の面会時などに提示でき、職員間でも共有し、日中の支援にもフィードバックできる。

 

介護職が腰を痛める要因でもある入浴介助。車いすに座ったまま特殊浴に入ることができる。湯温調整はもちろん、バブル浴もあるとか。一人で入れる方には、家庭のユニットバスのような浴槽の準備もある。

 

自動で寝返りを支援してくれるエアマットも、必要時には無料で利用できる。

テレビ持ち込みも無料。

Wi-fiは確認してみますと担当者。

 

スタッフは一人一台スマホを所持し、離床者やコール対応他、すべての業務を共有できる。

 

同行した生活相談員の女性はただただその施設の最新設備に絶句していた。

「なんか、恐怖を感じます・・。うちに職員が来ないはずです」

 

介護スタッフはどこも人手不足。処遇改善加算や夜勤などで、居宅ケアマネの何倍もの給与をもらえるのに・・。もっと言えば、ケアマネ資格保持者でも、介護スタッフの方が給与が良いため居宅ケアマネのなりてもいない。どこも人手不足。

 

人がいない。

若者はなおいない。

お年寄りはまだ増え続けるだろう。

施設はあっても人がいないため受け入れできない。

 

この話を持ち帰った際、やはり一定層は、そんな数値で管理したって、相手は人間なんだから良い介護ができるはずがない。心のある介護なんてできないだろう。という批判的な意見もあった。もちろん、最新設備投資ができる余力もない施設は、同じ土俵で勝負できないし、他の強みもある。しかし、現実に人がいないのだから、人でなくてもできる業務はICTにお任せするほうが、もっと人に向き合う時間を確保できるのではないかなと思う。実際に、在宅の方がショートステイ利用時に、眠りの深さや時間を数値化できれば、それに対する対処法も見つかりやすい。数値化する、データを集約して何かを開発する、科学的介護を国は進めているが、もう乗っかるしかない。私も含め、ICT自体、よく理解できていないから抵抗感があるが、人の部分は残しつつ共存していくしかないかと改めて感じた。

 

介護の担い手も外国人の方に頼ることができるのだろうか?若者の使い慣れたスマホで数値管理でき、それをもとに改善策を考え、お年寄りのQOLにつながった実感などが持てれば、やりがいはあるかもしれない。忘れてはならないのは、人対人であり数値だけを見てはいけない。きっと、よい手立てはあるはず。

 

最後に、

同じ利用料金を払うのならば、新しくて気持ちのよい施設に入りたい。

給与がそんなに変わらないのならば、新しくて気持ちのよい施設、スマホやタブレットなど最新機器を利用できる施設で働きたい。

色々な取り組みをしていて、本人の状況が良くわかる施設なら、安心して預けられる。