ケアマネの私とオフの私の日記

書くことで気持ちの整理をしていきたい。。

管理職の娘と一人で外出し転倒を繰り返す認知症の母

(タイトルだけ見ると、なんとも失礼な型にはめた一文になってしまった。認知症の・・・なんて一括りにネーミングするのはあまり好きではないのだが。)

 

80代の母親は徐々に物忘れが進行し、着替えや食事などが一人では難しくなってきた。母親と二人暮らしの同居の娘さんは、管理職試験にも合格し着実にキャリアアップされている。そのキャリアアップと並行して、母親の認知機能が低下されていくように感じられてならない。

 

娘さんは産後すぐに実家に戻り、母親にも育児の手伝いをもらい、孫娘さんは独立し近く結婚を控えている。二人の姉はどちらも県外で家庭もある。娘さんが母親をできる限り自宅で見たいという強い思いは、これまでの生活歴を伺う中で十分すぎるほど理解できていた。

 

母親は決まったルーティンは一人でもこなすことができた。娘さんが仕事の平日月~土はデイサービスを利用した。介護保険の限度額を超えてしまうが、それよりもルーティンを崩さないことが優先された。母親は、デイ帰宅後、近所の整骨院に歩行器を押して一人で出かけることもルーティンの一つになっていた。その行き帰りに転倒することが増え、何度痛い思いをされても忘れてしまい、やはり帰宅後は整骨院へ向かわれる。電話をしても、その時だけ。メモを置いてもどこかへしまってしまったりと、誰か傍にいての見守りなしには母親の行動を止めることはできない。デイサービスからも、在宅は無理なのではとの声が大きくなっていった。

 

娘さんが帰ってくるまで、デイ利用ができればよいのだがそれも難しい。保育園のように延長保育や、児童クラブなど時間外のお預かり制度が、もっと高齢者分野でも普及すればよいのだが。自費ヘルパーさんの見守りもあるにはあるが、料金設定が高い。毎日となるとかなりの負担。娘さんは出勤時間も早く、長時間営業しているデイサービスは近隣には存在しない。色々な手立てを考えてゆくことになるのだが、娘さんの焦りを感じることになる。デイサービスからの声も、娘さんの耳に入っていたのかもしれない。

 

ケアマネジャーとしてどうすればよいのか?このままでは娘さんが参ってしまう。

本人、娘さんのベストとは?

 

日に何度も娘さんからメールが寄せられ、その都度調べ提案しを2週間ほど繰り返しただろうか。色々試した結果、整骨院の常連さんで訪問マッサージをされている方が、毎夕、自宅にマッサージに来てくださることになってから、一人で整骨院へ行かれることもなく経過されている。

 

娘さんは、何度も仕事を辞めようかと悩まれていた。介護は終わりが見えない、しかし急に終わりになってしまうこともある。それでも、娘さんの人生は続いていく。介護と仕事、どちらも完璧にすることが難しいと思うが、どちらかを選択するのではなく、どちらもバランスを取って両立できればよいと思う。部活と勉強の両立みたいに、どちらかに専念しなくても良いのではないかと。国も仕事を続けながらの介護をみたいなことを発信しているが、実際はかなり困難との戦いにはなる。すべてを介護サービスで補えるわけではない。すべてをケアマネが解決できるわけではない。色んなサービスや地域を巻き込んで、また本人、介護者とも同じ方向を向けた時に進むべき道が開けるような気がする。そのためには、信頼関係が必要。その信頼関係を築くための対話の時間を持つことがなかなか難しいのも現実である。

 

「いろいろ相談させてもらって助かりました。メールばっかり送ってすみません。でも一つ一つ教えてくれて本当ありがたかったです」

 

娘さんからそう言われ、本当にこの支援で良かったのか?他のケアマネさんであれば、もっと的確な助言ができ、もっとスムーズに良い形に持って行けたのではと反省しきりだった。自分と境遇の似ている娘さんに思いが寄りすぎて、娘さんの揺らぎに一緒に揺らいでしまい、遠回りしてしまったかもしれない。